台湾の皆さんへの気持ち/鍋島由美-(135)

九月から玉蘭荘でボランティアをしている私は、これを書いている今、まだ台湾に来て一年も経過していません。そんな私が、台湾に来た頃の驚きや当時の想いを、記憶を辿りながら書いてみたいと思います。

 私が台湾に来たのは昨年の六月の半ばでした。ですから、三月十一日の東日本大震災の日はまだ日本にいました。ちょうど地震が発生した瞬間は仕事で外出しており、横浜駅で電車に乗ろうと地下へ潜るエスカレータに乗っているところでした。エスカレータがうねうねと左右に大きく揺れ、のんきな私は「今日は体調悪いな、めまいがする」と思ったのを覚えています。しかしそれが地震であると気づくまで時間はかかりませんでした。その後は、駅のパニック、徒歩での帰社、電話も通じず情報がない中での会社での一泊を経て、自宅で全てを知ります。

 日本中が悲しみ、不安になり、問題を分かち合い、前に進もうと顔を上げた時、台湾の方々の気持ちを知りました。日本のニュースでは、台湾で募金を呼びかける特別番組が放送されたこと、一ヶ月後には、台湾が既にアメリカと並ぶ世界最大規模の義捐金を集めていたことが報道されました。もちろん私は、夫の転勤に帯同し台湾に行くことが決まっていたのですが、日本を離れる後ろめたさと、日本に大きな助けをくれた台湾に行ける喜びとで、少し複雑な気持ちでした。

 その気持ちを解消する方法が一つありました。台湾に来る直前、少しだけ中国語を習う機会があったのですが、そこで一つ言葉を覚え、その言葉をできるだけ多くの台湾の人に伝えようと思ったのです。その言葉は五月、既に日本人の有志が台湾の新聞に広告として載せていました。

 台湾に来てからは沢山の人々のやさしさに触れます。いえ、やさしさに溢れていました。駅で地図を広げて眺めていれば「どこへ行くの?」と話しかけられ、やっと着いたレストランで長打の列に驚いていたら「どうしたの?」と声をかけられ、デパートではたどたどしい中国語で質問すれば、目的の場所まで連れて行ってくれました。ある時は、なんと手をつないでその場所まで案内してくれました。困っている人に手を差し伸べる、しかも思いっきりの方法で。

  その度にお礼を言った後、最後に「日本を助けてくれて有難う」と伝えました。ある人は「そんなそんな」という顔をし、ある人は悲しそうな目をして首を振り、ある人は「日本と台湾は友達だ」と言ってくれました。

 日本人である私も、台湾の皆さんと同じくらい日本人が善良であると自負しています。ですが、台湾の人々の「熱情」が、想うだけでなく気持ちを表現し、実際の行動へと移すのだと痛感しました。その何と温かいことでしょう。それに比べると日本はまだまだ感情表現が不得意かもしれませんね。

 最後に...それと同時に、日本がすぐに感謝の気持ちを表さなかった事実も知っています。そして日本人の中にそれを申し訳なく思う人も少なくありません。

 そんな中最近のニュースで、四月十九日の園遊会で天皇皇后両陛下が台湾の駐日大使に感謝の言葉を述べられたことを知りました。台湾の駐日大使が園遊会に招かれるのは初めてのことだそうですね。私を含めそれを喜んでいる日本人はとても多いです。

 気持ちを行動で表す台湾の人々、感謝の気持ちを前例のない行動で表した天皇陛下。気持ちが人を動かすということを、この台湾で体験し学べたことを、本当に嬉しく思います。

 台湾の皆さん、有難う。   (日常ボランティア)

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