玉蘭荘創立二十三周年(秋)を迎えて  蔡仁理 理事長-(136)

一日は千日に優る。(詩編 八十四編 五節・十一節)
いかに幸いなことでしょう あなたの家に住むことができるなら 
まして、あなたを賛美することができるなら。(詩編八十四:五)
あなたの庭で過ごす一日は千日にまさる恵みです。
主に逆らう者の天幕で長らえるよりは
わたしの神の家の門口に立っているのを選びます。
(詩編八十四:十一)

この詩編は長年バビロニアに囚われて祖国エルサレムのお宮を偲んで歌ったイスラエル詩人の作です。辛い空虚な寂しい外国に於ける切ない生活の中で、故郷のお宮に参拝する事の幸いへの憧れ、そして友との楽しき交わりが旅愁を混えて思い起こされ、その一日の麗しきよろこびは、他の場所で得られない満足感があり、幸いなことだ。その一日は外に居る千日の値に優る喜びであるとの譬えを「あなたの庭で過ごす一日は千日にまさる恵みです。」と歌ったのです。この詩編を読んで、私は玉蘭荘と私達の今の係わりが何なのかと考えさせられました。手元の歌集「玉蘭荘心の歌」をめくって見ると、収録された百二の歌の内半分近くの歌が故郷や故郷を偲ぶ、古き日の思い出(童謡も含めて)の 歌ばかりで占められている事に驚きを感じました。むべなるかな!毎朝の「歌声高く」の時間に参加者がリクエストで選んだ歌は、ほとんどが故郷を偲ぶ歌ばかりです。玉蘭荘もそのような意味に於いて皆さんシルバー族の心の憩いの場(ふるさと)ではないでしょうか?
玉蘭荘は今年九月に創立二十三年目を迎えました。皆さんにとっては玉蘭荘での一日の暮らしが外での千日に優る幸いと価値の有る日であることとして、長年皆さんと共に努力して参りました。その様な心持ちで益々努めて行きたいと願っております。
さて、また秋が巡って来ました。
漢字で「愁い」は秋の心と書かれている様に、年の暮れるのにはまだ早い九月ですが、今年の六月から九月にかけて、私達の住んでいる台湾は多事多端な月日でした。今年は「多事之秋」と云われる歳月に成る予感がいたします。この夏には死者を出す程の酷暑が十日以上も続き苛まされ、そして三、四度襲った台風では、記録破りの千二百ミリを超える豪雨が降り、全島東西各地に百五十箇所以上の洪水土砂崩れが発生し、死傷者並びに家畜・農作物・果物にも被害があり、生産者及び消費者にかなりの損害や影響を及ぼしました。気象庁の予測では、今年中に更に五、六回台風の来襲が有ると伝えれています。そして又頻繁に各地に起きたマグニチュード四、五度を超える地震は、見逃せない自然の災いの兆しだと思われます。加えて現代社会に於ける甚だしき不正の橫行や風紀の堕落・蔓延、改善策を手放したような現存体制に言い知れぬ怒りを感じさせられます。その外にも、経済状態悪化に伴って苦しむ貧困者(低所得者)の増加。何と憂い(愁い)多き秋である事よ!将来が思いやられて堪りません。私だけの杞憂でしょうか?お年寄りはもうそんなこと考えず、自分の事でさえ人の世話に成らなければ出来ない様な良い年齢をして、と言われそうですが、矢張りいろいろと考えさせられました。
しかし私は、聖書から慰めと力を与えてくれる神様のみ言葉を読みました。

詩編 九十四編 十七~十九節
主がわたしの助けとなってくださらなければ
わたしの魂は沈黙の中に伏していたでしょう。
「足がよろめく」とわたしが言ったとき
主よ、あなたの慈しみが支えてくれました。
私の胸が思い煩いに占められたとき
あなたの慰めが
わたしの魂の楽しみとなりました。
(詩編九十四:十七~十九)

人に襲い掛かる災いや悪に立ち向かうことの難しさ、嘆きの時代がやって来ました。そこに絶望に対する無力感、己の存在そのものが危くなる悩みに苛まれます。今、周囲の世界は多くの絶望を感じさせる事に満ち溢れています。しかし望みが絶たれているところに、尚望みを見出させる時、ただ信仰による望みが与えられるのだと、聖書は教えて下いました。

ハバクク書 三章 十六~十九節
それを聞いて、わたしの内臓は震え
その響きに、唇はわなないた。
腐敗はわたしの骨に及び
わたしの立っているところは揺れ動いた。
わたしは静かに待つ
我々に攻めかかる民に
苦しみの日が臨むのを。
いちじくの木に花は咲かず
ぶどうの枝は実をつけず
オリーブは収穫の期待を裏切り
田畑は食物を生ぜず
羊はおりから絶たれ
牛舎には牛がいなくなる。
しかし、わたしは主によって喜び
わが救いの神のゆえに踊る。
わたしの主なる神は、わが力。
わたしの足を雌鹿のようにし
聖なる高台を歩ませられる。
(ハバクク書三:十六~十九)

来る年の情勢は、私たちの住む社会が益々多くの厳しい事に悩まされると覚悟しなければ成りません。この聖書のみ言葉は、私に与えられた玉蘭荘二十三周年の励ましであると共に、新しい年度への会員の皆様にとっても励ましに成る様祈っています。           
(聖句は新共同訳聖書より引用)


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