特集 父の日に寄せて-父の証/ 羅梅妹 姉(会員)-(140)

七十一歳で父は召されました。父が召されて早四十年が経とうとしています。

当時、癌(脾臓)で入院していた父を、姉と私と妹は毎朝、家の仕事を終えると見舞いに行っていたものです。ある朝(冬の寒い日)父の所へ行った私達は、しきりに汗を拭いている父にびっくりしました。「この寒い天気に、どうして汗を拭いているの?熱でも出たんじゃない」と聞いたら「いいや、夢を見たんだ」と・・・ そしてその夢を話してくれたのです。

長いでこぼこの石ころ道と並んで、広い歩き易い道が果てしなく続いていました。広い道の方は、沢山の人が押し合いへし合い楽しく歩いており、父はでこぼこ道を大きな荷を担いで一歩一歩喘ぎながら歩いていたというのです。父は心の中で「荷物は重いし、道は悪いし、どこまで続くのだろうか」と思いながら歩いたそうです。そうしたら遥か彼方に小さい門が見えたそうで、父はその門に向って急ぎました。その門は小さい門でした。心の中で父は「こんな大きな体で、その上この重たい荷、どうやって通ろうか?」と考えていたら門の向う側から「無理して通れば通れるから」と言う声が聞こえたそうです。父は云われた通り、一寸無理したら通れました。門の向う側は、さっき歩いて来た所と同じようなでこぼこ道でした。父はがっかりしましたが、勇をふるって重い荷を担いで又歩き続けました。こうして同じ様な門を三つ通り過ぎ、ヘトヘトに疲れを感じた時、四つ目の門が目に付きました。父は足を引きずる様にして、四つ目の門に着いた時、もうこれ以上歩けないと思った途端、肩の重荷がスーッと肩から滑り落ちたそうです。身軽になった父は夢から覚めました。夢は父の一生を描いたもので、肩の重荷は 父の生涯の重荷だったのです。
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