1999市民ホットライン初体験/劉碧雲-(146)

生まれて初めて「1999ホットライン」に電話したのはこの初秋の頃である。事の起こりは、長い夏休みがやっと終って「玉蘭荘」の集いに参加しようとした朝、いつもの通りMRT大安ステーシヨンで降り、鼻歌を歌いながらいそいそとエスカレーターで降りようとした途端、「あれ?」随分と周囲が薄暗い。

昨年、両眼の白内障の手術後、目はパッチリで周りの世界はカラフルとなり、新聞の小さな字でもメガネ不用でホクホクしていた矢先に、さてはその目に何か異変でもとギョギョッとした。しかし待てよ!と今一度辺りを見回した途端、これは驚いた!今まで真っ白だった壁が何と一面ダークグリーンの広告に塗りかえられているではないか!目を凝らしてよく見ると、それは「日薬本舖」の膏薬の広告で、腰や肩などに幾つかの膏薬を貼った人体で、特に真正面は二階建ての高さもあろう筋肉隆隆の男性像で、且つ裸どころか皮膚さえないグロテスクな格好!その上にツボや貼り方を事細かく描写していて、朝っぱらから気色悪く気分を損ね、縁起でもないとブツブツぼやきながら玉蘭荘に向かった。

賑やかな一日を過ごしそのことを暫らく忘れていた。しかし、帰途につく折、このグロテスクな広告とまたかち合わせ、〝怒り心頭に発す〟。家に帰りついた途端、早速、1999市民ホットラインに電話した。「かくかくしかじか」と文句を並べたてると、相手曰く「この通話は全部録音させて頂きます。」と来た。「どうぞご勝手に!」とすぐ答えた。

さて週が変わって、又ノコノコとMRTで「玉蘭荘」へ。そのどす黒い広告と再び鉢合せ、もう全然この件を忘れてしまった私(忘れるのが大のお得意)は頭に来ちゃって、早速一階の事務所から出て来た中年の駅員を捕まえ、「一寸済みませんが意見用紙を下さい。」と言うと、相手はおっかなびっくり用紙を二枚渡しながら、オロオロと「何のご意見でしょうか?」と尋ねる。待ってました!書くよりも口の方が手っとり早い。「白い壁が、醜い広告でうまっていること。朝から痛そうに膏薬を貼ってるのを見た途端、私も腰が痛くなりかけたこと。他の駅では美しい景色の宣伝が多いこと。南港駅はジミーの可愛らしい絵で有名。私の家近くの大湖駅は公園の錦帶橋や白鷺の群。台北駅は画廊で世界的に有名等々、立て板に水で沢山の例を挙げ、「大安駅近くにも立派な大安公園があるじゃないですか?」(何でよりにもよってこんな変な広告を)とはさすが遠慮して口に出せず、「もし契約上どうしても某薬屋の広告を画くのでしたら、裸でなしに某薬屋の店員にイケメンや美人がわんさといますから、キリっと制服を着せてセールスさせたら如何?」とご親切(?)に意見。「裸でなくても結構ですよ!」と念を押すと、この一寸肥った駅長さんらしい人は、吹き出すのを一生懸命我慢して顔を赤らめていた。「1999にも電話しました。」と私が最後に止めをさす様に言うと「もう掛けましたか?」と目をむいて驚いていた。

さて、又一週間過ぎ、私はすっかりこの一件を忘れ、意見書もそのままカバンの底。大安駅に降り立つと、又またビックリ仰天、壁全体が薄いピンクと水色に美しく塗りかえられているではないか?一寸信じられない結果に一瞬目を見張つた。何はともあれ、先ずは一件落着でめでたしめでたしだった。
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