証し/羅梅妹

二〇一六年二月二十四日の夜、トイレに立とうとして、杖がすべり、尻餅をついてしまった。老人が転ぶということが、どんなに恐ろしいことであるか、この度の経験で痛いほど味わった。

転んだ翌日、排泄が何の予告もなしに出て来ることに、激しいショックを受けた。子ども達に助けられて病院へ行き、いろいろな検査の結果、恥骨を強く打ったので、背骨にくっ付いていた神経が離れてしまい、そのため排泄が指図を受けずに勝手に出てくる様になったのだ、という説明だった。あれから今日までの八ヵ月、初めての経験に戸惑う毎日だった。

すべての世話を子ども達に助けて貰わなくてはならなくなったので、台中に住む娘の傍で、お手伝いさんを頼んで住みたいと願うようになった。しかし、どうやって...。どうしたら...。様々な心配事が頭を駆け巡る。ただ必死で御父、神に助けを求めた。探してみたが台中のどこにも、手ごろな家など見つからない。また、お手伝いさんも、おいそれと見つけることも出来ない。長男も次男も、捜すのは無理だから、台北に住んでいるように求めた。

そんなある日、台中の娘が同僚に、母の苦しみを打ち明けた。すると同僚は「父親が重病で後いくばくもない。亡くなったらお手伝いさんをあなたのお母さんに紹介しましょう」と話したという。また娘は、職場の近くの、一軒も空き家のなかった場所にもう一度仕事帰りに寄ってみると、正に今、ちょうど一軒の空き家が出来たところだった。娘からこの知らせを受けた私は、流れ出る涙を禁ずることができなかった。天のお父さまの御助けなくして、こんなに順調に家もお手伝いさんも見つけることが出来たでしょうか。

台中へ向かうとき、長男は涙を流して見送ってくれた。次男は私の身の回りの荷物と共に、台中へ連れて行ってくれた。私が台中の家に着くと程なくして、お手伝いさんが駆けつけてくれた。彼女は敬虔なカトリック教徒だ。私は今、このお手伝いさんの手を借りて、娘の傍で静かに暮している。

天の御父なる神様の配慮と、祝福を心から感謝し、癒され、玉蘭荘にいける日の来ることを、一日千秋の思いで待ち望んでいる。
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