ボランティアさんのリレーコラム-話せる喜びそして楽しさ/久保田明美

「おはようございます」「いつもご苦労様」日本語でこうして普通に会話できることがどれだけ嬉しいことか。約三年間のブラジル生活で私はそのことを思い知らされました。家族や友達と話し笑う。

そんな毎日から一転、知り合いが全くいない国に暮らしドキドキしたことや面白いと感じたことを話す相手がいないことがどれだけ寂しく退屈なことか...。街を歩いていて日本語が聞こえてきた時に知らない人に「お友達になって下さい」と声をかけそうになったことが何度もありました。

しばらくしてから語学学校でポルトガル語を習い始めました。小さな子供が言葉を覚えるように「肉」「魚」「人参」「じゃが芋」と一つ一つの単語が読めるようになるにつれ、市場やスーパーなどでお店の人と話せるようになりました。その時に子供ってこんな風に読めるようになることに喜びを感じているのだろうなと思いました。少しずつ友達もでき私は再び笑える毎日を過ごせるようになりました。

玉蘭荘の会員さんの話す日本語は丁寧できちんとしているなといつも驚かされます。日本語の本を読み、テレビを見て疑問に思ったことを尋ねられることがありました。その探求心には驚かされキチンとお答えできなかった自分の語彙力にガッカリさせられることも度々ありました。何歳になっても何かを続けていくことはとても大切で同時にそれは難しいことでもあると思います。暮らしていくために学んだポルトガル語は台湾に来て使わなくなった途端に私の記憶からサラサラと抜け落ちています。代わりに中国語を覚えているかと聞かれたら...。残念ながらそこまでには至りません。

台湾では様々な所で日本語を見かけます。お店の人も私が日本人だとわかると日本語で説明して下さいます。今の私は完全にその状況に甘えています。話すことができないと生活することが大変だった頃の辛さをすっかり忘れて。

街で楽しそうに話している人達をみていつも思うこと。それは話せる相手がいて言葉が通じるという当たり前のことが実はとても有難いことなのだということです。日本にずっと住み暮らし続けていたらそのことに気付くこともなかったと思います。

これからも私なりのペースで言葉を学ぼうと思っています。目の前には母語を持ちながらさらに日本語での会話を今も楽しみ続けている玉蘭荘の会員さんという最高のお手本がいるからです。少しでも近づけるように楽しみながら頑張れたらいいなと思っています。

*ポルトガル語で「肉」=CARNE
「魚」=PEIXE 「人参」=CENOURA
「じゃが芋」=BATATA です。


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