敬愛する高俊明牧師を偲んで/常務理事 連碧玉

私たちが尊敬してやまない台湾のモーゼ・高俊明牧師が二月十四日の夕方、台南德輝園で惜しまれつつ天に召されました。享年九十歳でした。高牧師が亡くなられたその日は、奇しくも高牧師と高李麗珍牧師夫人(玉蘭荘第三、四代理事長)の六十一回目の結婚記念日でもありました。昼間、高牧師一家は集まって一緒に聖書を読み、祈りを捧げ、結婚記念日をお祝いしました。高牧師は子供たちの前で、人生の中で数々の奇しき導きを下さった主に、そして病に伏した中でも常に隣で支え続けてくれた夫人に感謝の言葉を述べられました。そして家族の温かい祝福を受けた後、夕方、眠るように主のもとへ旅立たれました。

ここで高俊明牧師の人生を簡単にご紹介しましょう。
一九二九年 誕生
一九四二年 日本・青山学院中等部に入学
一九四六年 終戦翌年、台湾に戻り長榮中学に編入
一九四九年 台南神学院に入学
一九五三年 神学院を卒業し、自らの希望で原住民部落での
伝道を開始
一九五七年 玉山神学院院長に就任
一九五八年 李麗珍女史と結婚
一九七〇年 臺灣基督長老教會總會第十七代議長に就任、
その後総幹事にも選出される
一九七一年 PCT(台灣基督長老教會)が国民党によってWC(世界教会協議会)を脱退させられる。この年「国民の生命と提案」を発表、台湾の人民には自決権があり、中央民意代表は全面的に改選すべきだと主張
一九七五年 PCTは「我々の声」を発表、人民の信仰の自由公正、人権を訴える
一九七七年 PCTは「台灣基督長老教會人権宣言」を発表、しい独立国家の建設を主張
一九八〇年 施明德氏を隠匿した罪で逮捕され入獄、四年後出所
一九八九年 九年間務めた長老教會の総幹事を退任、その後松年大学(高齢者大学)の創設に携わり、総校校長に任命される
二〇一一年 国際幸福家庭連盟の発起人となる
二〇一九年 二月十四日 召天

高牧師が残された数々の美しい足跡は、金銭も、命をもってしても代えがたいものです。主に仕える謙虚な心とどんな困難にもひるまず立ち向かう強い気持ち、祈りによってゆらぐことのない信仰心で、その一生を素晴らしい証として生きてゆかれました。まさに私たちの鑑と呼べる方でした。

高牧師は一九七〇~一九八九年の間、台灣基督長老教會の総幹事を務められ、その任期中、台灣長老教會は三つの大きな声明の発表と信仰の告白をしています。高牧師は白色テロと戒厳令の中、台灣長老教會を主導し、民主の自由に向かって歩み続けて行かれたのです。私たちは台灣長老教會の信仰告白の中で高牧師が語られたこの言葉を忘れることが出来ません。「教会は愛と苦しみを経て希望のしるしとなったのです。」

総幹事を退任された高牧師は、その後も精力的に活動され、松年大学を創立し、初代総校校長に就任されました。総校校長を務められた二十年間で学生数は八十二名から三千名以上にまで増え、高牧師はその後名誉校長に就任されました。

二〇一一年、八十二歳になられた高牧師は台湾社会における家庭の価値観の低下を感じられ、「国際幸福家庭連盟」を発足、人々が個人、家庭、社会(地区)、国、ひいては世界中で家族のような愛のある関係を築いてゆくことを目標とする活動を始められました。そして家庭を代表するテーブル(TABLE)の一文字ずつにそれぞれT:Table(対話する)、A:Accept(受け入れる)、B:Bless(祝福する)、L:Listen(耳を傾ける)、E:Enjoy(共に楽しむ)という文字を当て、これを幸福な家庭の五大元素と定められました。教会と政府もこの活動に賛同しています。こうして高牧師がその身をもって示されてきた婚姻の価値、家庭への愛と心は、私達の心にも深く刻み込まれています。

台北市信義路の台北市松年福祉會「玉蘭荘」の会員たちは、高俊明牧師と高李麗珍前理事長ご夫妻が会のために愛と情熱をもって尽力してくださった事を忘れてはおりません。二〇〇〇年に当時の理事長・許石枝長老の推薦で、高李麗珍牧師夫人は第三、四代の理事長をお務め下さいました。そして高牧師ご夫妻の多大なご協力、ご指導のおかげで、玉蘭荘は安定した運営の中成長してゆくことができました。当時高牧師あるいは理事長(牧師夫人)が玉蘭荘で毎月礼拝を行ってくださり、私達は主に守られた大家族の中でお二人のメッセージを拝聴し、感謝のお祈りを捧げました。活動中もご夫妻は慈愛の心をもって会員、職員、ボランティアたちと交流を持ってくださいました。高李麗珍牧師夫人が理事長を退任された後も、ご夫妻は一~二か月に一度南部から台北にお見えになり、礼拝を行ってくださいました。それは高牧師のお体が弱られるまで続き、牧師は謙虚な心で主に仕えるという、その手本を私たちに示して下さいました。

敬愛する高牧師は私達のもとを離れ天の家に帰られてしまいましたが、九〇年の歳月を通してキリストの愛を人々に証してくださいました。台湾にこのような信仰の師を遣わして下さった事、改めて主に深く感謝いたします。また地上に残された高李麗珍牧師夫人とご家族を主の愛を以てお守りくださいますよう、お祈りいたします。
最後に、玉蘭荘創立二十五周年記念文集の巻頭に高俊明牧師がお寄せ下さった聖書のみ言葉をご紹介します。


正しい者はなつめやしの木のように栄え、
レバノンの杉のように育ちます。
彼らは、主の家に植えられ、
私たちの神の大庭で栄えます。
彼らは年老いてもなお、実を実らせ、
みずみずしく、おい茂っていましょう。
こうして彼らは、主の正しいことを告げましょう。
主はわが岩、主には不正がありません。
詩編九十二:十二~十五

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