訪問ケアの思い出/陳旭星

ある日の午後、淡水の空の雲は梅雨空から消えかけていました。淡水・三芝にある雙連安養院(老人ホーム)には、玉蘭荘の元ボランティアで、今はすでに九十歳になられる王英英さんが入所されています。車椅子の英英さんと面会に行った私たちは静かな庭園を散歩しておりました。すると、道端で寝転んでいる二匹の綺麗な猫に出会いました。お話することが不自由になられた英英さんですが、すぐに指を指して微笑まれました。内片貴子常務理事と高橋檀総幹事も猫たちに近寄り、頭や体を撫でて、可愛がりました。この光景を目にして、私の胸はとても熱くなり、優しくて熱心なボランティアとして活躍してくださった、以前の英英さんの姿を思い出さずにはいられませんでした。

私が玉蘭荘の関懐組として奉仕して以来、神に召された会員は幾人もおられますが、特にここに書き記したいお方は黄素華さんです。素華さんは背が高くてとても謙遜なお方でした。玉蘭荘に入会する前に、すでに台大病院で脳腫瘍の手術を受けておられました。私と一緒に玉蘭荘の英語クラスを受講し、いつもニコニコしながら会員たちと交わりをされていました。脳腫瘍が再発し、二回目の手術をされることになりました。入院中、関懐組は素華さんを頻繁にお見舞いしました。宣教師の松本望美先生も、ご来台の折には、キリストの福音を素華さんに述べ伝えて下さいました。そして素華さんのために切に祈って下さいました。その後、素華さんはエレベーターのない四階の住いから、私の家の近所にあるアパートの一階へ引っ越して来られました。

ある日、素華さんは、松本望美先生に、「クリスチャンになりたいので、洗礼して下さい。」と申し出られたのです。このことをアメリカに住んでおられるクリスチャンのお嬢様に電話で伝えましたら、お嬢様はすぐに台湾へ飛んで来られました。そして、素華さんは、臼杵みどり牧師によって洗礼を受けられました。お嬢様によると、お母様が洗礼を受けることを四十年余りの間祈っておられたそうです。素華さんは、その洗礼の一ヵ月後に天に召されました。

新約聖書マタイ福音書二十章十六節に「...後にいる者が先になり、先にいる者が後になる」と書いてあります。素華さんは正にイエス様に選ばれた先の者であられると私は確信しています。

玉蘭荘の関懐組は電話でのケアと訪問ケアをしております。会員が急病で活動を休む時は、電話で事情をご本人やご家族から伺い、入院やお宅で療養されている場合は、ご本人とご家族のご同意を得て、訪問やお見舞いをします。

玉蘭荘の会員のケアは、私たちだけでなく、台北にある国際日語教会の臼杵みどり牧師、そして日本住在の松本望美宣教師が来台された際に、心温かなケアをして下さっており、心より感謝致しております。この書面をお借りして、改めて御礼申し上げます。
(理事・関懐組副組長)
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