きらり 台湾滞在記/木下拓海

こんにちは、二〇二二年の七月から玉蘭荘にてボランティアをさせていただいている木下拓海(ひろみ)です!台湾には二年前に留学生として来ました。今は、台湾にあるアメリカ式の高校を卒業し、来年から始まる大学までの空白期間に日語教会での奉仕の傍ら、玉蘭荘にお邪魔させていただいています。

 ちょうど今、若気の至りか「お邪魔させていただく」と、厚かましく筆を走らせた直後に、我に帰って「いや、本当にお邪魔になってないよな?」と突然不安に襲われました。というのも、ピアノ演奏や手工芸に関する特別に秀でた才能のない私は、玉蘭荘における「唯一の」仕事といえば、ただ会員さんと共に時間を過ごし、会場の平均年齢をグッと大幅に下げることのみ(笑)な気がするからです。多少冗談めかしに書きましたが、しかしこれは確かで、もちろん帰る際の掃除はしますが、玉蘭荘で過ごす大半は会員さんと体操したり、絵を描いたり、習字をしたりなどです。ボランティアらしいことを一切しない私のようなふざけた人は怒られてしまいそうですが、それでも、皆さんが「若い人と話すのは楽しい」「若い人のことを知りたい」とおっしゃり、暖かく私を迎えてくださったことは、本当に感謝なことで私の宝物です。

又それと同時に、ただ時間を共に過ごし語らうことも貴重な奉仕であると考え直すきっかけになりました。もちろん、自分には特別な才能や、特技がないことは変わりません。しかし、「持ってないこと」を延々と嘆くのではなく、むしろ会員さんが来てほしい、若い人の言葉を聞きたいとおっしゃってくれる限り、私に与えられた数少ない「持ってること」を最大限生かして奉仕したいと思うのです。もしその「私が持ってること」の中に、「今しかない若さ」を特別な才能として数えることが許されるのであれば。

さて、私が玉蘭荘に来るようになったのは、日語教会の繋がりで、長野深雪さんからのお誘いがきっかけでした。そしてそれ以来、何度も足を運ぶ中で一番驚かされたのはやはり会員さんの元気さです。カラオケにボードゲーム、この間は、クリスマス礼拝で合唱団のメンバーとして会員さんと共に三曲歌い、三曲ハンドベルを演奏しました。そんな会員さんとの活動を通して脳裏に浮かぶのは、今も日本で生活している私の祖母たち。台湾に来てからは感覚的に日本への距離は多少遠くなってしまいましたが、それでも、今まで日本では経験できなかった祖父母世代の方との交流を台湾で初めて経験しました。

会員さんといるとよくお孫さんの話になります。いつも旧正月や連休に帰省する息子、娘、孫のことを楽しそうに話されているのが印象的です。場所は違えど、私の祖母達も、会員さんも状況は似ています。会員さんのお子さん達は国外にいることが多いのと同様に、私の祖母にとっても、子供、孫らはちょっと離れたところに感じ、いつもその帰りを待っているのだろうと思います。今まで、帰省するのは大型連休中だけだったけど、毎週玉蘭荘に行くようになってようやく、祖父母はいつもいつの日でも楽しみに待っているのだと気付かされる日々です。日本にいる時には近すぎて見えないことに、遠く離れてようやく気づくこともあるのですね。そんなことも学んだ台湾滞在記。たくさんの素敵な出会いを与えてくれた玉蘭荘の皆さんには感謝でいっぱいです。

※木下拓海君は四月から日本の大学に進学するそうです。
日本での活躍にも期待しています!
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